レスポール
レスポールは、ギブソン社のエレキギターの中でももっとも有名なモデル。
そもそもはジャズ/ポップス・ギタリストのレス・ポールが開発したギターで、彼のシグネチャー・モデルである。Standard(スタンダード)、Custom(カスタム)、Special(スペシャル)、Junior(ジュニア)、Deluxe(デラックス)、Studio(スタジオ)、Classic(クラシック)等多くのモデルが存在する。
高音部が弾きやすいようにボディが削られたシングル・カッタウェイ、フロントとリアのふたつのピックアップ、そしてそれぞれのピックアップ専用のボリューム、トーンコントロールがあり、それらのピックアップをスイッチで切り替えるなど、現在のレスポールとほぼ同じ形状のギターとしてレスポール・モデルは誕生した。
当初はシングルコイルのソープバー、ドッグイヤーなどの異名をもつP-90タイプのピックアップが搭載されていたが、レスポールが有名になったのはやはり1957年モデルから採用された「P.A.F」ピックアップが搭載された頃からだろう。このピックアップはシングルコイルを二つ並べたようなダブルコイル(いわゆるハムバッカー)となっており、コイルの巻く向きと磁極を逆にしてノイズをキャンセルする仕組みになっている。副作用としてシングルコイルよりは甘く、しかも大きな音が出ることになったがこれがレスポールタイプのギターの魅力となっている。ちなみにこのハムバッカー構造を持つこのピックアップは特許出願され、そのことを示す「特許出願中(Pattent Applied For)」のシールが貼られていたことからP.A.Fと呼ばれた。 このP.A.FピックアップはStandardモデルとCustomモデルに採用されたが、廉価モデルであるJuniorとSpecialにはP-90が搭載され続けた。 Standardモデルは1952年の発売開始から1958年の中盤まで所謂ゴールドトップと呼ばれる金色のメタリック塗装を施されていたが、'58年後期から'60年にかけて、Flame Maple Topと呼ばれる、見る角度によって炎が揺らめくような、独特の杢目を持ったメイプル材を使用して、高級感を打ち出したモデルチェンジが実施された。しかし、はっきりFlame Mapleが確認されるものは全体の三分の一程度と言われている。 発売当初は外側から内側にかけて赤色から、茶色、黄色に変化する「サンバースト」と呼ばれる塗装が施されたが、特に赤色の褪色が激しく、経年変化による塗色の変化が独特の色彩美をもたらし、杢目の美しさと相俟って、一種芸術品的な評価を受けている。 しかし、現在ではエレクトリック・ギターの中で最も高価で取引される、'58~'60年製のサンバースト・モデルも、まだロックンロールが誕生して間もなかった発売当時の音楽シーンにおいては、サウンドにパワーがありすぎ、コントロールしづらく、重量も重いということで、一般的な人気を得るには至らず、約1,400本製作された末に製造中止となった。そして、ボディをモディファイして重量問題を解消した、後にSGと呼ばれるモデルにバトンを渡すこととなった。
再評価されたレス・ポール・モデル
そもそも、ギブソンというのはジャズギターを中心に製作していたが、このレス・ポールを一躍有名にしたのは、エリック・クラプトン。ブルースブレイカーズのアルバムにゲスト参加したアルバム「ブルースブレイカーズ・フィーチャリング・エリック・クラプトン」で聞かれるレスポール+マーシャルアンプの組み合わせによるディストーション・サウンドは「極上のサウンド」と絶賛された。そしてレス・ポール+マーシャルアンプの組み合わせは当時のブルース・ロック、ハードロックサウンドに不可欠なものとなった。
特にクラプトンが使用していたレス・ポールは使われていた木材も良質で、マホガニーのボディにマホガニーのネック、さらにボディ表面にメイプルが貼られ、この左右対称に貼られたメイプルの杢が虎の背中の模様のように美しいギターである。現在ではこのPAFピックアップやボディを再現することは難しく、経年変化により渋い色になった1958年、59年製はマニアによってマンションが買えるほどの値段で取引されている。 また1958年、59年製のレス・ポールはゲイリー・ムーアなどプロギタリストが所有している場合も多い。
ギブソンは、1960年にそれまでのレス・ポール・シェイプのギターの生産をすべて中止し、翌1961年、軽快な音色を追求したオールマホガニータイプのSGシェイプにフルモデルチェンジしたのだが、これがレス・ポール本人の不評を買い、彼とのエンドース契約は一時打ち切られた。しかし、ロック・シーンにおける再評価で、レス・ポール・モデルの需要が再び高まったので、ギブソンはレス・ポールと再契約の上、1968年にStandard,Customの両モデルを再発した。現在はこれらもコレクターズ・アイテムとして評価されている。しかし'69年以降、Deluxe, Proffesional, Recording などの新しいシリーズをラインアップしたものの、SGモデルが定着した以外は商業的には不成功に終わっいる。
クラプトンはその後レスポールカスタムを使用するが、それ以後レスポールを使用することは殆ど無くなった様だ。代わりにレスポールを名刺代わりにしたのがレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ。特に長いストラップで腰よりも低い位置で弾く姿は、「エレキギターは低い位置で弾くもの」という流行を生んだ。もっとも、ジミー・ペイジ自身は、パワーのあるテレキャスターという認識で使用していたらしく彼のレスポールのネックはテレキャスターに近いシェイプに削られていたという。他にもポール・コゾフ、ピーター・グリーン、ミック・ロンソン、ミック・テイラー、ディッキー・ベッツなどのギタリストがレスポールを愛用した。
70年代後半のフュージョン・ブーム、さらに80年代のLAメタルシーンなどではトレモロ・アームを搭載したストラトキャスター・タイプのギターが席巻し、レスポールはほとんどみられなかったが、80年代後半、ガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト、スラッシュの使用によってレスポール人気が再燃。オジー・オズボーン・バンドのザック・ワイルドなどもレスポールを使用し、大音量・パワフルなレスポール・サウンドが再びロックシーンに帰ってきた。日本ではシグネチャーモデルもリリースしたB'zのギタリスト松本孝弘等も愛用した。
この理由としては、その後80年代中期以降のハムバッカーを搭載したStandardのリイシュー、また90年代に入ってからのCustomshop製作による、「Historic collection」の本格的な再生産が始まるまでは、メイプルネックを採用するなどそれ以前のレスポールと仕様が異なる70年代のレスポール自体あまり評価が高くなかった事も原因の1つであろう。因みに近年70年代のレスポールはザック・ワイルド等多くのギタリストが使用し再評価されてきている。
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